あれは忘れもしない中学2年生の夏休み。天気が良くとても暑い昼下がりのことでした。

私はクーラーの効いた部屋の中で、椅子に座りながらのんびりとゲームでもしていたと思います。

かなり昔のことなので、この辺は記憶が曖昧です。まあ、私が何をしていたかはさほど重要ではないのです。

重要なのは、私がふと目を庭にやった時に見てしまったものなのです。

私の座っている位置からは庭がカーテン越しにぼんやりと見えました。庭といっても木が一本生えているだけの簡素な空間です。

その庭に目をやったとき、何やら黒い物体が揺らめいているのに気づきました。

庭に何の用だろうと怪訝に思いながら、私は黒い物体の正体を探るべく、窓辺に近寄りました。
そしてカーテンの隙間から、ちらっと垣間見るようにして庭の様子をうかがいました。

すると、見えたのは知らないおじさんの後ろ姿でした。

とっさに身をかがめその知らないおじさんに気づかれないようにしました。私は、見てはいけないものを見てしまったと思いました。

知らない人が庭に立っているだけなら、私はここまで冷や汗を流し、心臓をバクバクさせる必要はなかったでしょう。

その知らないおじさんは、普通では考えられない姿をしていたのです。

私が見てしまった知らないおじさんには不可解な点が2つありました。

1つは、パンツ一丁だったこと。詳しく言えば、パンツ一丁でエプロンの結び目が見えたのです。

俗にいう裸エプロンの類でしょうか。この段階では、後ろ姿しか見えていないので全貌は明らかではありません。

もう一つの不可解な点は、頭にまるでソフトクリームのようなもこもこの泡を乗っけていたことです。

そのもこもこ具合は尋常ではありませんでした。おじさんの頭2つ分くらいはあったのです。

おそらくシャンプー中なのだろうと私は勝手に推測しました。

こんな状況なのに冷静な自分が不思議でした。真夏の幻か何かだと思いたかった。

そしてもう一度カーテンの隙間から覗きました。

なんで真の住人が庭に堂々と立っている不審者を、こそこそとのぞき見しないといけないのか。

立場が逆転していないかと思いました。変態取りが変態になってしまうのではないか。

するとおじさんはゆっくりとこちらを振り返りました。

まずい、気づかれてしまったと私は焦りました。

しかし、覚悟を決めました。おじさんと対峙しようと。

そして、おじさんの顔をしっかりと見ました。

父でした。

私は唖然としました。目の前が真っ白になりました。変態おじさんがまさか父だったなんて。

ここで私の記憶は途切れました。

目を覚ました時私はすべてを悟り安心しました。すべて真夏の幻だったのです。つまり夢だったのです。

今は正夢にならないことをただ願うばかりです。