「そこの山があるからだ」という言葉を知らない人はいないでしょう。
これはイギリスの登山家・ジョージ・マロニーが、新聞のインタビューで発した言葉です。

この言葉の一般的な理解は、「なぜ、あなたは山に登るのか?」という問いに、「そこに山があるからだ」という哲学的な、また禅問答的な答えとして捉えています。
なんだか意味不明瞭で、でもだからこそ、「なんで、お酒ばっか飲むの?」「そこに酒があるからだ」という様なアレンジでいろいろな場面で私達は使っています。

しかしこれは正確に意味が伝わっていません。

Why did you want clime Mount Everest?

の質問に、マロニーは

Bcause it’s there.

と答えています。

つまり「どうしてエベレストに登りたいのですか?」「そこにそれがあるからだ」という会話です。
明らかに「it」はエベレストの事で単なる山ではないのです。
その後にマロニーが続けて、「エベレストは世界最高峰で誰も登頂していない」と答えている事からしてもそれは確かです。
正確な意味を伝えるならばこのマロニーのセリフは「そこにその山があるからだ」と「その」という二文字を入れなければならないわけです。

人の言葉を正確に伝えるのは事程左様に難しいものです。言い換えれば簡単に意味がかわってしまうのです。
業務遂行に当たって、言葉によるコミュニケーションが重要である事は言うまでもありません。ほんの少しの意味の取り違えが重大なミスにつながりかねません。

言葉による伝達に際しては、言う方も聞く方も言葉の意味が簡単に変わってしまう事を十分に意識し、注意する事が大切です。